裁判が起きているのはなぜ?ファクタリングの違法性とは?

資金調達方法の一つである「ファクタリング」は、銀行融資のように時間がかからない点がメリットです。業者によっては、即日で契約が成立する場合もあり、経営者にとっては早期に資金調達を行える手段として活用されています。しかし、過去にはファクタリング業者と利用者の間でトラブルが発生した事例が少なくありません。なかには裁判に発展したり、警察による摘発を受けたりしたものもあるのです。今回は過去の判例も含めて、なぜトラブルに発展したのかを解説します。

ファクタリングは違法?悪い取引ではない?

ファクタリングそのものは違法なものではありません。一般的に、ファクタリングと呼ばれているのは、企業間取引によって発生する売掛債権を売却することで資金を調達する手法です。これは経済産業省が推奨している「売掛債権を利用した資金調達」です。そのため、ファクタリングを活用することやファクタリング業者を経営すること自体が違法性を帯びているわけではないのです。ファクタリングには、銀行融資のような時間がかかってしまう審査はありません。

また、利用者である会社の経営実態ではなく、売却される売掛債権の信用力が審査の対象になります。そのため、資金繰りが苦しくなっている会社でも利用できる便利な資金調達手段だといえるでしょう。ただし、ファクタリングという名前を利用した違法行為は存在しています。活用すれば経営を安定化させる手段の一つになるものでしょう。そのためにも、正しい知識を身につけることが重要です。

 

過去に起きたファクタリング裁判の争点

ファクタリング自体に違法性はありません。ところが、ファクタリングの名を借りた違法行為によって、裁判にまで発展した事例もあります。本来は正当な取引・商売を利用して、違法な行為に手を染める人物は少なからずいるものです。だからこそ、実際にファクタリングを利用する前に、過去に起きたトラブルを知っておくことが大切でもあります。トラブルになった経緯を理解しておくことによって、結果的に自分の身を守ることにつながるでしょう。

2017年3月3日に判決された事例で争点となったポイントを見ていきましょう。この裁判のケースは、原告(運送業者)が売掛債権をファクタリングによって現金化したというものです。ところが、原告と被告(ファクタリング業者)との間で交わされた契約が実質的には「売掛債権を担保とした金銭消費者貸借取引だった」として、過払い金が請求されたのです。実際の判決では原告側の請求通り、ファクタリングを装った金銭消費貸借契約だったと認められ、被告には利息制限法の適用により過払い金の支払いが命じられました。この裁判におけるポイントは3つです。1つ目は「債権譲渡契約に償還請求権が付いていたか」です。2つ目は「手数料が適正であったか」という点であり、3つ目は「譲渡代金の支払い方法は適切だったか」というものです。ここからは、それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

 

2017年3月の判例ポイント1:償還請求権

この裁判における判決の争点は、原告と被告が結んだ契約が「ファクタリング(債権譲渡)」なのか、それとも「債権譲渡担保付金の貸金」なのかという点です。そして、判断の1つ目のポイントとなったのが、「償還請求権」でした。売掛債権をファクタリングする場合、契約によってファクタリング業者に償還請求権の有無は契約内容によって異なります。償還請求権とは、売掛債権が回収不可能になった場合にファクタリング業者がサービス利用者に買い戻しを求める権利です。

日本で主流となっているファクタリングは、償還請求権のない債権譲渡契約です。この場合、利用者は業者に対して売掛債権を譲渡し、その代金を受け取ることになります。売却した債権が回収不能になるリスクについては、ファクタリング業者が引き受ける形です。そのため、ファクタリング業者は一般的な借入と比較して、割高な手数料を取るケースもあります。債権のリスクを引き受ける代わりに、高い手数料を得ることが認められているわけです。

逆に、償還請求権がある譲渡契約の場合、債権回収が不可能になれば利用者が債権買取を求められる可能性が高いでしょう。ファクタリング業者としては、債権回収が不可能になっても、利用者に請求すればよいということになります。これは業者がリスクを負わない契約といえるでしょう。そのため、償還請求権のない契約のような高額の手数料を得る根拠がありません。この事例では、契約内容には含まれていないものの、実態は債権の買い戻しを強要するような状態でした。そのため、償還請求権があったものとみなしたのでしょう。

 

2017年3月の判例ポイント2:手数料が高額

実質的に償還請求権が付いていると判断された契約ではあったものの、償還請求権付きの譲渡契約自体は違法ではありません。この裁判の2つ目のポイントは、手数料が高額だったという点です。金銭消費貸借契約には、利息制限法が適用されます。この法律では、利息上限金利を年利20%と定めています。金銭消費貸借契約は、契約上は貸し出した資金からリスクなく利益を得られるものであるため、上限利息を超えた収益を上げることを禁止しているのです。

ところが、債権譲渡であるファクタリングの場合は、この制限を受けません。償還請求権のない債権譲渡の場合、債権が回収不可能になるリスクをファクタリング業者が背負うためです。そのリスクに見合った手数料を得ることは正当な商行為とみなされます。しかし、償還請求権付き債権譲渡の場合、金銭消費貸借契約と同様にファクタリング業者はほとんどリスクを負いません。そのため、利息制限法の定める金利上限を超えるような利益を得ることは正統ではないと判断されました。

 

2017年3月の判例ポイント3:支払いが一部のみ

3つ目のポイントは、譲渡代金の支払い実態でした。この事例では、ファクタリング業者は利息制限法を基準に計算すると過払い金が発生するほどの手数料を得ています。そのため、償還請求権があるとすれば不適切に高額な収益を上げていたことになります。ところが、実際の契約においては、償還請求権があるとはされていませんでした。それでも、裁判所は「実態として債権の買い戻しが必要な契約だった」と判断したのです。

原告が売掛債権を買い戻さない場合、譲渡債権が全額回収できた場合のみ債権譲渡代金を満額支払う内容になっていました。債権回収が完了するまでは、譲渡代金が一部しか支払われていなかったのです。つまり、譲渡代金を全額受け取るには債権の全額回収が確認されるか、債権そのものを買い戻すしかありません。そもそも、ファクタリングを利用して資金調達を行おうとしている時点で、利用者には売掛債権が回収できる期日まで待っている余裕がないはずです。そして、債権譲渡の代金が債権を買い戻すとすれば、利用者はただ手数料を払っただけになってしまうでしょう。つまり、この時点で債権を売却して資金調達を行うというファクタリングとはまったく違うものになっています。

売掛債権の譲渡契約であるにもかかわらず実際に支払われた代金は一部だけであり、全額受け取るには売掛金の回収ができる日まで待つか、あるいは債権自体を買い戻すしかないという実態が問題になったわけです。結果として、この事例は「ファクタリングではなく、債権を担保とした貸借契約である」という判決になりました。そのため、ファクタリング業者には利息制限法が適用され、利息上限を超える部分の手数料について過払い金として返還することが命じられました。

 

2017年にファクタリング業者が逮捕された事件

2017年には、ファクタリング業者を名乗っていた2つの会社が大阪府警によって摘発された事例がありました。容疑は貸金業法における未登録営業の疑いです。摘発された2社は、ファクタリングを装って無登録で貸金業を営んでいた容疑があるとされました。さらに、ファクタリング業者を名乗りながら実態は売掛債権を担保とした貸付を行い、出資法の定める金利を超えた高金利を取っていた疑いまであるというのです。警察による摘発を受けた事例はほかにもあり、ファクタリング業者と名乗りながら悪質な貸金業を営んでいるところも少なくありません。

ファクタリングは、債権の譲渡・取引契約にあたります。本来のファクタリングには、利息制限法や出資法などの法的制限を受けないのです。そのため、ファクタリング業者には利用者のニーズに合わせたさまざまなサービスを自由に展開できるという面があります。ところが、そうした法的な縛りが少ない部分に目を付けた悪徳業者が、ファクタリングに見せかけた高利貸しを行ったりしているのです。ファクタリング自体は違法ではなくても、それを隠れみのにして、利用者から暴利を得ようとする業者がいることを覚えておきましょう。法整備が進んでいない状況では、利用者自らが怪しい業者から身を守るしかないのです。必要に応じて、司法書士や弁護士などの専門家の力を借りながら、安全な取引を行っていくことが重要だといえます。

 

ファクタリングの基本知識を理解する重要性

ファクタリングの名目で高利貸しをするような違法業者から身を守るためには、ファクタリングについての基本的な知識を持っておくことが重要です。まず、ファクタリングによる売掛債権の取引には、償還請求権が付いているものと付いていないものの2種類があります。そして、日本国内で主流となっているファクタリングは、償還請求権の付いていないものです。そのため、償還請求権や債権の買取が必要になるような契約を求められる場合は注意する必要があります。償還請求権のないファクタリングは、ファクタリング業者にとってリスクを伴うものですから、ある程度は手数料が高くなってしまうでしょう。

しかし、どれだけ高くても、売却する債権の30%を超えるような手数料は避けるべきでもあります。また、ファクタリングは売掛債権を買い取ってもらうサービスですから、譲渡代金は一括で支払われるのが一般的です。代金の支払いが一部だけだったり、全額を支払うのに条件が付いていたりする契約は、悪質な業者の可能性があるため安易な契約は行わないようにしましょう。

 

違法ファクタリング業者かを見極める方法

違法なファクタリング業者を見極める方法の一つは、手数料が相場を超えているかどうかを確認することです。売掛債権のファクタリングには、利用者と業者だけで行う「2社間ファクタリング」と、売掛先の企業も交えた「3社間ファクタリング」の2種類があります。3社間ファクタリングの場合、売掛先の経営状況などから信用力を確認しやすく手続きもスムーズに進むため、手数料は売却する債権額の1~5%程度に抑えられるでしょう。その一方で、2社間ファクタリングでは業者側が売掛先の返済能力を調査する必要があるため、手数料が高くなってしまうのです。それでも、相場は売却する債権額の10~30%ほどだといわれています。売却する債権の売掛先の信用力が極端に低い場合には、リスクの高さに比例して手数料も高くなるからです。それでも、30%を超えるような手数料を求められる場合には、その業者を利用するのは控えておくほうが良いでしょう。

また、ファクタリングは原則として売掛債権の譲渡契約です。そのため、業者と利用者の間で契約書が取り交わされるのが一般的だといえます。ところが、悪質な業者の場合は契約ごとに契約書を破棄したり、そもそも契約書を作成しなかったりすることがあるのです。契約内容を明記した書類を残すのは、お互いの権利関係を明確にするためにも必要なことです。それを避けるとすれば、業者側に何か問題があると考えてよいでしょう。

ほかの方法としては、Webサイトや会社情報にファクタリング業者の住所が記載されているかを確認するというものもあります。住所だけではなく、電話番号についても確かめておくとよいでしょう。固定電話ではなく、携帯電話の番号のみが記載されている場合、信頼できる業者とはいえません。きちんとした業者であれば、住所・所在地や連絡先もしっかりと整えているはずです。資金調達のために利用する業者だからこそ、信頼できるところを探すように意識しておきましょう。

 

ファクタリング裁判は要チェック!違法性を見極めて

ファクタリングは決して違法なものではなく、資金調達手段としてのメリットや利便性があります。しかし、ファクタリングという名前を利用して、悪徳な貸金業を営むような業者もいることは事実です。たびたび裁判を起こされたり、警察による摘発が行われていたりする実態については理解しておくべきでしょう。だからこそ、過去の判例などをしっかりとチェックしたうえで、悪質な業者や違法業者にだまされないように注意することが大切です。ファクタリングの活用は、資金繰りの改善などにつながるものですから、正しい知識を身につけておくように心がけましょう。