ファクタリングをすると売掛金の入金タイミングや仕訳は変わる?

ファクタリングは、売掛金を売却することで現金化できる資金調達手段の1つです。ファクタリングを利用する場合は、手数料などの契約条件を確認することはもちろん、会計処理についても理解しておくことが欠かせません。ファクタリングの会計処理は、一般的な掛け売りの取引と比較すると仕訳が複雑になります。特に、ファクタリングを利用しているなかで売掛金の入金があった場合の処理がポイントです。そこで、ファクタリングにおける売掛金入金に関する仕訳の方法などについて解説します。

会計処理の基本は取引の都度仕訳を行うこと

ファクタリングの会計処理を行うためには、仕訳を理解することが大切です。ファクタリングの会計処理は、そのほかの商取引と同様に、取引ごとに仕訳を作成することが基本となります。仕訳とは、事業を進めていくなかで生じた取引について、その取引内容を勘定科目に分類して金額とともに記載する会計処理の最小単位です。すべての仕訳を一定の方法で集計することによって、貸借対照表や損益計算書が完成します。仕訳は、会計処理に欠かせない部品なのです。勘定科目は、その性質によって5つのグループに大別されます。どの勘定科目も、資産か負債、純資産、収益、費用のいずれかに分類される仕組みです。

資産と負債、純資産は、貸借対照表を構成します。また、収益と費用は、損益計算書の作成に必要となるものです。資産や費用が増加した場合は、仕訳では借方に記載します。負債や純資産、収益が増加した場合は、貸方に記載するのがルールです。1つの仕訳において、借方と貸方の合計金額は同じになるように作成します。また、それぞれの科目が減少した場合は、借方と貸方を逆に記載することが必要です。仕訳は、取引ごとに行うことになります。そのため、まとめて処理しようとすると混乱したり作業が大変になったりするでしょう。毎日仕訳を作成しておけば、資産や負債の最新状況を常に確認できる状態を保て、経営判断にも役立ちます。

 

売掛債権とは?掛け取引の基本をおさらい

ファクタリングは、売掛債権の一種である売掛金をファクタリング会社に譲渡して、その売却代金を受け取る取引です。売却した売掛金からはファクタリング手数料が差し引かれるため、受け取る資金は売掛金よりも少なくなります。融資取引ではなく売買取引であるため、担保を求められないことが特徴です。ファクタリングを行わない場合は、売掛金の決済日まで待てば資金を受け取れます。ファクタリングは、決済予定日前に売掛金を現金化できることも特徴です。そのため、ファクタリングの会計処理を把握するためには、通常の売掛金に関する取引を理解することが欠かせません。

売掛金は、掛け取引によって生じる勘定科目です。掛け取引とは、売買した商品などの代金をその場で現金授受を行うのではなく、後日決済する取引方法のことです。飲み屋で後払いにしてお酒などを飲んだ場合、「つけ」で飲んだといいます。掛け取引の「掛け」は、飲み屋の「つけ」にあたると理解しておけばよいでしょう。売掛は、販売する商品などの代金を後日支払ってもらう方法で売ることです。あとで代金を受け取る権利が売掛金になります。買掛はその逆で、購入する商品などの代金を後日支払うことです。この場合は、買掛金が生じます。企業間の商取引では、現金払いではなく掛け取引が主流です。手形取引のように書類は残しませんが、一般的には、包括的な取引基本契約などで「月末締め翌月払い」といった形で掛け取引の条件を決めておきます。

 

売掛取引で現金が手元に入るのはいつ?

売掛取引を行った場合、商品の引き渡し時点やサービスの提供が完了した時点で売上代金を受け取ることはせず、後日において支払ってもらうことになります。その決済日をいつにするかは、取引先との交渉によって決まるのが一般的です。業界によっては標準的な期間が設定されている場合や、慣習によって決まるケースもあるでしょう。また、下請法などの法規制などで最長の期間が定められることもあります。納品から売掛金入金日までの期間が長くなれば、資金繰りには不利になります。逆に、決済日までの期間を短くできれば、運転資金は少なくて済み、資金繰りには有利です。

一般的な決済日は、商品の引き渡しなど売上が成立する条件を満たしてから1カ月~数カ月程度後になります。また、納品日などを基準にするやり方だけでなく、月末締めで期間を定めるケースも多いです。大切なポイントは、販売時点で決済日を決めておくことでしょう。販売時点で売掛金の入金日まで決めておくことがビジネスの基本です。そのため、売買契約を締結する前に、販売金額や納期だけでなく、売掛金の入金日についても合意しておくことが重要になります。売掛金の入金日の決め方は、大きく分けると2種類あります。個々の売買契約ごとに決済日を定める方法と、取引基本契約などで包括的に決済日を定める方法です。どちらの形態がとられるかは、業種や取り扱う商品、取引先の方針などによって異なります。

 

ファクタリング取引の基本を理解しよう

ファクタリング取引とは、掛け売りの取引を行ったことによって生じた売掛金などの売掛債権を、ファクタリング会社に買い取ってもらう取引です。売掛金を譲渡した会社は、その対価として資金を受け取ることになります。売掛金は、売買契約などで定めた決済日が到来しないと現金化することができません。しかし、ファクタリングを利用することによって、決済日前で現金化することが可能です。急に資金が必要になった場合、金融機関に対して融資の申し込みをしても、審査期間が長いなどの理由で支払い時期に間に合わないこともありえます。また、融資を断られるケースもあるでしょう。そういった場合でも、資金調達できることがファクタリングの魅力です。

また、売掛金の決済日までの期間が長い場合は、多くの運転資金が必要になります。売掛金が多くなると、資金繰りが苦しくなることも珍しくありません。そういったケースでも、ファクタリングの利用は有効です。売掛金を譲渡して早期に現金化すれば、その資金を仕入れなどに回すことができます。運転資金が少なくて済むようになり、キャッシュフローを改善させることが可能です。ただし、ファクタリング手数料の負担が生じるため、売掛金の額面全額を現金化できないことを理解しておきましょう。ファクタリングを利用する場合は、仕組みを理解したうえで賢く利用することが重要です。

 

2社間ファクタリングでの入金のタイミング

ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングがあります。ファクタリングの会計処理を知るためには、それぞれの形態の特徴を理解しておくことも大切です。2社間ファクタリングでは、売掛金譲渡会社とファクタリング会社の2社間で契約を交わすことになります。2社間ファクタリングの特徴は、売掛金譲渡会社が2回の入金を受けることです。それぞれの入金タイミングで会計処理を行うことになるため、通常の掛け取引よりも処理は複雑になります。

1回目の入金タイミングは、ファクタリング契約を締結してファクタリング会社から売却代金の入金を受けるときです。売却代金からはファクタリング手数料が控除されますが、残額については売掛金決済日前に現金化できます。2回目のタイミングは、売掛金の決済日です。2社間ファクタリングの場合、売掛先会社にはファクタリング契約が締結されたことは通知されません。そのため、当初の契約条件通り、売掛先会社は商品を仕入れた会社に対して支払いを行うことになります。しかし、売掛金はすでにファクタリング会社に譲渡されているため、売掛金譲渡会社が受け取る資金は、直ちにファクタリング会社に送金することが必要です。受け取った資金をそのままにすると、二重に資金を受け取ったことになってしまいます。

 

3社間ファクタリングでの入金のタイミング

3社間ファクタリングとは、契約者が3社になるファクタリングのことです。売掛金譲渡会社とファクタリング会社に加え、売掛先会社も契約当事者となります。3社間契約の場合は、売掛先会社も対象となる売掛金についてファクタリングが行われることを知っているということです。3社が契約当事者になるため、売掛金が決済されてファクタリング成立する可能性が2社間ファクタリングよりも高くなります。そのため、2社間ファクタリングよりも3社間ファクタリングのほうが手数料は安くなるのが一般的です。

3社間ファクタリングの場合、売掛先会社が支払う先はファクタリング会社になります。契約当事者であるため、売掛金が譲渡された先であるファクタリング会社に直接支払う形です。売掛金決済に先立って、ファクタリング会社は売掛金譲渡会社に買い取った売掛金の代金を支払います。その段階で手数料を差し引かれるのは2社間ファクタリングの場合と同じです。売掛金譲渡会社が資金を受け取るのは、このファクタリングを行って売掛金の売却代金を受け取るときだけになります。売掛金の決済は直接ファクタリング会社に対して行われるため、2社間ファクタリングのようにファクタリング会社に送金する必要は生じません。

 

2社間ファクタリング入金時の仕訳

2社間ファクタリングの入金は2回あるため、それぞれ会計処理を行う必要があります。まず、ファクタリングによって売掛金の売却代金を受け取るタイミングの処理です。たとえば、売掛金1000万円、手数料100万円、入金先が普通預金である場合、まず、「借方:未収金900万円、売掛債権譲渡損100万円/貸方:売掛金1000万円」と処理します。その後、ファクタリング会社から入金があった段階での仕訳は、「借方:普通預金900万円/貸方:未収金900万円」です。結果的に、900万円の普通預金の増加と1000万円の売掛金の減少、100万円の手数料が処理されたことになります。売掛金の譲渡とファクタリング会社からの入金が同時に行われる場合は、未収金勘定を通さず省くのが一般的です。

次に、売掛金が決済されてファクタリング会社に送金する段階での処理です。売掛金の入金時は、「借方:普通預金1000万円/預り金1000万円」と処理します。受け取った資金は自社のものではないため、預り金勘定を使用します。資金をファクタリング会社に送金するときの仕訳は、「借方:預り金1000万円/貸方:普通預金1000万円」です。この段階での2つの処理は、結果的に相殺されることになります。ファクタリング会社の代わりに資金を受け取り、その資金を渡すだけの取引であるため、売掛金譲渡会社の財産や損益は変動しません。

 

3社間ファクタリング入金時の仕訳

3社間ファクタリングの会計処理は、2社間ファクタリングよりも簡単です。3社間ファクタリングを利用する場合は入金のタイミングが1回しかありませんので、ファクタリングを行ったタイミングで仕訳を作成すれば処理は完了します。売掛金1000万円を譲渡して、ファクタリング手数料を100万円負担する場合、売却代金が普通預金だとすると、仕訳は、「借方:普通預金900万円、売掛債権譲渡損100万円/貸方:売掛金1000万円」です。売掛債権譲渡損は、手数料にあたる勘定科目で、営業外費用に該当します。

売掛金譲渡と売却代金入金のタイミングがずれる場合は、2つに分けて処理することが必要です。ファクタリングによる売掛金譲渡と売却代金の入金を分けて処理する場合は、まず、「借方:未収金900万円、売掛債権譲渡損100万円/貸方:売掛金1000万円」と処理して未収金を認識します。債権譲渡取引は、販売取引ではないため売掛金ではなく未収金を使用することがポイントです。ファクタリング会社から手数料控除後の売却代金入金があった場合は、「借方:普通預金900万円/貸方:未収金900万円」と処理します。売掛金の決済は、売掛先会社からファクタリング会社に直接行われることになるため、売掛金決済時における会計処理は不要です。

 

負債を増やさず資金調達するならファクタリング

ファクタリングの利用は、通常の掛け取引よりも会計処理が複雑になるという課題もあります。しかし、早期に資金化できキャッシュフローを改善できるというメリットに加えて、負債が増えず負債関連の経営指標が悪化しないという点も魅力です。手数料コストがかかったとしても、利用することが経営にプラスに働くこともあるでしょう。資金調達は必要だが、金融機関から融資を受けて負債が増加することは避けたいという場合は、ファクタリングの活用が有効です。会社経営においては、状況に応じて資金調達方法を変えることも必要になります。資金調達方法の選択肢を増やすためにも、ファクタリングの会計処理を理解して利用してみることをおすすめします。