ファクタリングは買戻しがない?手形との違いから検証!

日本の企業では、手形割引による資金調達が一般的に利用されてきました。手形割引では、割引した手形が不渡りになった場合、利用者が買戻す必要があります。利用者にとって、手形の不渡りは大きなリスクです。手形割引のほかに、企業が資金調達する方法としてファクタリングがあります。ファクタリングの場合も、売掛債権が回収不能となった場合、利用者が買戻しをしなければならないのでしょうか。ファクタリングと手形の違いを踏まえたうえで、売掛金の回収が不能となった場合に買戻しが必要なのか解説します。

手形に関する基本知識1:手形とは何か

日本の企業では、従来から手形取引が主流となっています。取引に利用される手形のことを約束手形といいます。約束手形とは、手形に記載された金額を支払うことを約束した有価証券のことです。支払期日が到来すると、手形に記載された金額が銀行から支払われることになります。約束手形は企業間取引で一般的となっている売掛金や買掛金よりも、支払いを先延ばしできることが特徴です。企業は手元に現金がない場合でも、手形を利用して支払いをすることができます。支払わなければいけない資金は、支払期日が到来するまでに用意し、当座預金へ入金しておけばよいのです。

企業は商品を仕入れた際、現金で代金を支払う代わりに約束手形を発行し、取引先へ渡します。受取人は取引のある銀行へ受け取った約束手形の取立依頼をしなければなりません。取引銀行は受取人からの取立依頼を受けて、手形交換所で振出人の取引銀行と手形の交換をします。その後、約束手形の満期日までに振出人は取引銀行の当座預金へ、約束した金額を入金するという流れです。代金は受取人の銀行へ送金されるので、受取人は満期日以降いつでも約束手形を現金化することができます。約束手形は現金化までに日数がかかりますが、手形をほかの取引先への支払いに使うことも可能です。また、満期日前に銀行で現金化する方法もあります。

 

手形に関する基本知識2:手形のルール

手形は一定のルールのもとで、企業間取引に利用されています。まず、手形とは特定の期日に、特定の場所で記載された金額を支払うことを約束した証書です。実務上は銀行から交付される統一された手形用紙に要件を記載します。手形を受け取ったら、企業は約束手形の取立を取引銀行へ一任し、銀行間で決済が行われることになります。受け取った約束手形は、第三者へ譲渡することも可能です。約束手形を譲渡する場合、譲渡人は手形用紙の裏面に氏名と住所を記載し、押印します。さらに、譲渡したい相手の会社名を記載すると、約束手形の譲渡と認められます。この手続きが、裏書譲渡です。

また、振出人が満期日までに資金を用意できなかった場合、銀行は受取人に現金の支払いを行うことができません。これを不渡りといいます。資金繰りが難しい場合は、不渡りを出す前に支払期日を書き換えることも可能です。支払期日の書き換えは手形のジャンプと呼ばれます。ジャンプは手形のルールとして認められているものの、要請があった場合は倒産の危機なので要注意です。要請を受ける場合は、保証人を立ててもらったり代金の一部を支払ってもらったりするなどの対処が必要となります。

 

手形に関する基本知識3:手形の様式

手形は銀行が用意する約束手形用紙に必要事項を記載するのが一般的です。金額や受取人の氏名、振出日、支払期日などの基本事項のほか、振出人の住所氏名や支払場所となる銀行名・支店名、手形交換所などが記載されます。手形振出人氏名の横には、振出人の銀行届出印を押印する場所があります。手形の額面が10万円以上の場合は、収入印紙の貼付が必要です。収入印紙は手形の左上に貼り付けられます。さらに、押印や手書き文字による割印が必要です。印紙代は10万円以上100万円以下が200円、100万円を超え200万円以下は400円、200万円を超えて300万円以下は600円と金額によって変わります。

手形を受け取った場合は、記載内容に間違いがないか、偽造の可能性はないか確認することが大事です。特に、重要なポイントとして、金額が訂正されていないか確認する必要があります。金額の訂正は法的には認められていますが、実際には金額が訂正された手形は信用度が低くなってしまいます。銀行が訂正された手形を受け取らないこともあるため注意が必要です。また、振出日の日付が満期日よりも後の日付になっている場合は、手形として無効となります。さらに、振出人と裏面に記載された第一裏書人の名前が一致しているかどうかも確認しましょう。一致していない場合は、裏書不備のため換金できません。

 

手形割引とは?期日前に現金化できる!

手形割引とは、受取人が手形の満期日よりも前に現金が必要になったときに、銀行や専門業者に手形を買い取ってもらい換金することです。ただし、支払い期日よりも前に換金すると、満額を受け取ることができません。手数料や利息が割引された金額を受け取ることになります。企業が早急に資金調達する手段として、古くから行われてきた方法です。手形割引は、手形の売買として法的に認められた資金調達方法です。ただし、手形割引を申し込んでも、必ず換金できるとは限りません。手形割引を利用するには、審査を受ける必要があります。審査に通らなければ、手形を換金することができません。

手形割引の審査方法は、銀行や専門業者によっても異なります。銀行で手形割引を利用する場合、持込人の信用度を特に重視します。通常の融資と同じように、持込人の会社の財務状況や借入状況などが審査対象です。企業の信用情報により手形割引が可能かどうか判断されます。一方、専門業者では振出人の信用力が重視される傾向があります。その場合、振出人の会社の信用情報が、審査に通過できるかどうかのカギとなるのです。もし、信用情報に不審な点があれば、手形割引を利用することができません。そのほか、手形割引では裏書人の信用度をチェックすることもあります。

 

手形が不渡りになると買戻し請求がくる

振出人が支払期日になっても手形の金額を支払えなかった場合、手形は不渡りとなります。手形が不渡りになった場合、銀行は満期日が来ても手形の代金を支払いません。もし、受取人が手形割引により銀行から資金調達していた場合は、買戻し請求をされることになります。手形の買戻し請求が行われると、受取人は代金が支払われないうえに、手形の代金を支払わなければなりません。受取人は手形の不渡りにより、大きな損害を負うことになります。手形の不渡りは振出人だけでなく、受取人にも大きな影響があるのです。

手形が不渡りになると、振出人は不渡り処分を受け、手形交換所により金融機関へ不渡り報告が行われます。金融機関へ不渡りの事実が通知されると、振出人は金融機関からの借入ができません。さらに、6カ月以内に2度目の不渡りを出した場合は、銀行取引ができなくなり事実上の倒産となります。しかし、手形が不渡りとなった場合でも、手形自体は有効のままです。現金化するのは難しいものの、振出人と交渉して代金を回収する必要があります。また、裏書人がいる場合には、裏書人にも支払いの義務が生じます。不渡りにより買戻し請求された場合には、振出人や裏書人と交渉し、できるだけ資金を回収しましょう。

 

ファクタリングの基本知識1:仕組み

手形割引に似たサービスとして、ファクタリングがあります。ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、譲渡した債権分の代金を受け取ることです。企業は売掛金の支払日よりも前に、資金を調達することができます。資金が利用者に入金される際、手数料が差し引かれて受け取りとなります。売掛債権の買取なので、融資のように毎月返済する必要がないことがメリットです。また、融資とは審査方法も異なるため、融資の審査に通らなかった場合でも利用できる可能性があります。ファクタリングの審査では、売掛先の信用度を重視する傾向があるからです。

ファクタリングの契約方法には、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングという方法があります。2社間ファクタリングは、ファクタリング会社と利用者だけで契約する方法です。一方、3社間ファクタリングは売掛先の同意を得て、3社間で契約を結びます。一般的に2社間ファクタリングのほうが、高い手数料がかかります。しかし、売掛先の同意が必要ないため、入金までの日数が短いのが特徴です。ファクタリング契約では、基本的に売掛債権の譲渡後は、利用者が債権を回収する義務がありません。債権回収の義務がないという点が、手形割引との大きな違いです。

 

ファクタリングの基本知識2:種類

ファクタリングには、主に4つの種類があります。一般的に行われているファクタリングサービスが一括ファクタリングです。一括ファクタリングはさまざまな業種が利用できるファクタリングで、契約方法も2社間ファクタリングと3社間ファクタリングから選べます。企業の資金繰りが厳しいときに利用できる資金調達法の一つです。また、保証ファクタリングというサービスもあります。保証ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社から保証してもらうサービスです。ファクタリング会社は売掛先の信用度を調査し、売掛債権の支払いを保証します。もし、売掛先が支払い不能となった場合は、ファクタリング会社が代わりに代金を支払ってくれるという仕組みです。

主に輸入業者が利用するファクタリングサービスとして、国際ファクタリングがあります。国際間の取引においては、これまで銀行に「信用状」を発行してもらい、支払いを保証してもらうのが一般的でした。国際ファクタリングは信用状の代わりに、国際間の支払いを保証してもらえるサービスです。そのほか、医療機関のみが利用できる診療報酬ファクタリングというサービスもあります。診療報酬ファクタリングは診療報酬が発生する医療機関や薬局などが、診療報酬をファクタリング会社へ譲渡して早期に現金を受け取る方法です。受け取りまでに数カ月かかる診療報酬を前もって受け取れるというメリットがあります。

 

ファクタリングは買戻し請求はない!

ファクタリングでは、手形割引のように売掛先が支払い不能に陥った場合でも、基本的に買戻し請求が発生しません。つまり、ファクタリングは利用者が債権の未回収リスクを負う必要のないサービスなのです。通常、手形割引では売掛先の経営状況の悪化や倒産などにより不渡りとなった場合は、持込人が譲渡先となる銀行や専門業者に対し支払いの義務が生じます。そうなると、持込人が債権の代金を回収しなければなりません。しかし、もともと支払い能力がないために不渡りとなったのに、債権の代金を回収するのは困難でしょう。手形割引ではこのようなリスクがあります。

しかし、一般的なファクタリング契約では、万一売掛債権の支払いが行われなかった場合でも、利用者に支払いの義務はありません。なぜなら、ファクタリングでは契約上償還請求権が付いていないからです。償還請求権とは、債権譲渡後に売掛先が債権の支払いができない場合、譲渡した側に代金を請求できる権利のことです。ファクタリングでは、償還請求権が付いていないため、売掛先が代金を支払わない場合でも、利用者が負担する必要がありません。ただし、契約の内容によっては、償還請求権が付いていることもあるため、契約時によく確認することが重要です。

 

ファクタリングでも買戻し請求されたら?

ファクタリングで買戻し請求された場合、利用者はどのように対処すればよいのでしょうか。まずは、契約書の内容を確認することが必要です。ファクタリング契約に償還請求権が付帯されている場合は、買戻しの義務が生じる可能性があります。利用者はファクタリング契約を結ぶ際に、償還請求権が付いているかどうか事前に確認することが重要です。償還請求権が付いている場合は、手数料が安くなるというメリットがあります。しかし、買戻し請求のリスクを避けたい場合は、償還請求権なしの契約にするべきです。

ただし、償還請求権が付いているにもかかわらず、手数料が高い場合は融資と判断されることもあります。実際、償還請求権付きのファクタリング契約が金銭消費貸借契約にあたるとして、利息制限法の適用が認められたことがあるからです。金銭の提供が融資にあたる契約だとすれば、利息制限法を超える手数料は過払い金として返還請求することができます。焦点となるのは、ファクタリング契約に償還請求権が付いているか、手数料が高すぎないかなどです。償還請求権付きの契約には、ファクタリング会社も慎重になっているのが現状です。

 

契約内容はしっかり確認!トラブルを避けよう

ファクタリングと手形割引は、売掛金を早期に現金化できるという点で似ているサービスです。しかし、手形割引には不渡りになった場合の買戻し請求のリスクがあります。一方、ファクタリングでは売掛先が支払い不能となった場合でも、基本的に買戻し請求がありません。ただし、ファクタリングの契約内容によっては償還請求権が付いていることもあり、買戻し請求される可能性もあります。ファクタリングの契約時には、償還請求権の有無をしっかり確認しましょう。